■ゲームを取り巻く現在と、これから。
今回、飯田氏へのインタビューをまとめている際、編集部内でこん な会話がありました。
――「『ゼルダ』とか、ゲームタイトルに関しては註釈つけようか?」
松谷「どうなんだろうねぇ。本数でいえば、『ゼルダ』は200万本くらい出てるからねぇ」
――「でもさ、一般というか、PiCの読者にとっては、まだゲームは浸透度が低いのかなぁとも思うし」
松谷「うーん、どうなんだろうねぇ。そのへん、よくわかんないよね。そんな気もするし、もうゲームは十分に浸透したとも思うし」
結局註釈は入れなかったのですが、このような会話が発生するという状況が、現在のTVゲーム状況をよく表しています。「子供の玩具」「遊び」「オタク文化」云々……そんな昔ながらの認識だけではなく、拡大・多様化しているTVゲーム状況はどこまで認知されているのだろうか、と。
この我々の迷いは、ゲームへの認識や認知度が大きく激変している 最中だということを意味しています。
昔は簡単でした。
TVゲームは主に「ゲーム性(駆け引き)」を軸 に一元的に支持され、語られてきましたから。ただ、「ゲーム」とはいいますが、ゲームは世の中にたくさんあります。将棋も囲碁も野球もサッカーもゲームです。これらは歴史が普遍性を認めたといってもいいゲームでしょう。
しかし、飯田さんの2作目『太陽のしっぽ』は、暴力的までにゲームの目的性、つまりゲーム性を否定しました。そしてそれは保守反動層から「クソゲー」とのレッテルも貼られました。
たしかに、駆け引きの妙味(=ゲーム性)がないという点では「クソなゲーム」でしょう。ただ、そもそもTVゲームって、「ゲーム性」を軸に考えたり評価したりしていいのでしょうか?
この話は、「TVゲームとは何か?」という本質論にも発展します。なぜなら、飯田さんは「ゲーム性(=駆け引き)」ではなく、「TVゲーム性(=触れる映像)」に重点を置いていたのですから。
飯田和敏という存在が、ずっと「異端」として扱われていた背景に は、このようなTVゲーム表現の変遷があります。そして、それはそのまま冒頭に挙げたPiC編集部の迷いともシンクロします。
もはや「クソゲー」という言葉が、ゲーム好きの子供たちの間での スラングではなく、死んだ言葉として懐かしさとともに流通
し、SCE(ソニーコンピュータエンタテインメント)は「TVゲーム」ではなく「コンピュータ・エンタテインメント」と声高に言う(この語が浸透することはないだろうが)状況。表現の多様化とともに、
我々受け手の認識も多様化しつつあるのです。
さて、以上は長い長い前置きです。ゲーム界では、このような我々の逡巡と、その背景などはろくに論じられもしないので、敢えてここに記してみました。
そのような我々の悩みを喚起させる一端となった飯田和敏氏の人となりですが、僕は何度も取材させていただいてますが、あまりよくわかりません(笑)。けっこう激しくヘコむらしいです。
僕自身も落ちるときはけっこうガクッとウツになるので同情はします。 まぁでも、本人曰く「三ひねりくらいあって普通
になった」というのが的を得ている気がします。
ただ、今回のインタビューは、それ以上に飯田さんの情報感度の良
さやそれの編集能力の高さに注目してみました。
クリエイターの方は、みなさん努力家なのはもちろんですが、タイプとしては「天才型」と「秀才型」の2つに分かれます。「天才型」
は自らの能力を超然と信じきる強さがあり、「秀才型」は地道な努力と編集能力で勝負する感じ。
飯田さんは、前者のように思われがちですが、圧倒的な後者です。今回のそんな飯田さんの編集能力が存分に出れば良いかな、と。本人が椎名林檎を「雑食」と言ったように、飯田さん自身も実は「雑食」という点が見えればなぁと思ったわけです。
ホントはとても濃い濃いゲーム話もしたかったのですが、それは過渡期である現在ではなく、2〜3年後にしたいですね。その頃に、
TVゲームが多様化したままさらに拡大し、その結果として成熟したTVゲーム状況があることを願いつつ。
飯田さんは、「これから 落ちていく一方だ」と仰ってましたが。さて、どうなることやら……。
【終わり】 |
【飯田和敏プロフィール】 いいだかずとし。1968年、東京生まれ。多摩美術大学卒業。大学在学中に、様々なマルチメディアタイトルの制作に携わった後、(株)アートディンクに入社。1995年に企画・監督・グラフィックデザインを手がけた『アクアノートの休日』(プレイステーション)がヒット。アンビエント・ハウスに影響を受けたこの作品は、海洋を散歩するだけという独自の作風が話題を呼んだ。翌年、原始人を操って走り回る『太陽のしっぽ』、1999年には任天堂のニューハード64DDから巨人を操る異色作『巨人のドシン1』をリリース。ゲームに現代美術や音楽のエッセンスを盛り込む、希有なゲーム作家。
【松谷創一郎プロフィール】
まつたにそういちろう 1974年5月12日生まれ。広島県広島市出身。武蔵野美術大学中退
ライター 本、マンガ、映画、ゲームなどに関してのレビュー、インタビューなどを中心に活動中。
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