■PiC Interview VOL.001 SABU(第一回)

現在公開中の映画『MONDAY』。一人の酔っぱらいが悪に立ち向か う……というと荒唐無稽な感じだが、そんな突拍子もないスタート から加速度的にボルテージをあげていくこの傑作は、ベルリン映画 祭で国際批評家連盟賞を受賞した。この作品を創ったのがSABU だ。それまでにも『弾丸ランナー』、『ポストマン・ブルース』、 『アンラッキー・モンキー』と、良い意味で日本映画らしくない、 エンターテインメントを産みだしてきた。この4作に通底する、お かしくも何か哀しい男の物語は、脚本も手掛ける監督のSABUの 鏡像なのか?  今週から3回に渡りSABU氏へのインタビューをお送りするが、 今回はその1回目。取材は今年の1月末。折りしも、SABU氏が ベルリン映画祭に向かう直前であった。

【Text/松谷創一郎】

 



 

 

 

■『MONDAY』で4作目ですが、まずこれまで3本を振り返えると、どういう流れだったんですか?

やりたいことを、ちゃんとやろうと。単純にそう思ってて、“作家性”とか考えてなかったですね。とにかく“観て楽しい”ものとして、『弾丸ランナー』と『ポストマン・ブルース』を、1年間で2本慌てて創ったんです。で、『ポストマン』を撮り終わった後に、ベルリン映画祭に『弾丸ランナー』が出品されて。

■外国人の反応はどうでした?

あいつら、質疑応答やインタビューでも、深いところを突いてきたりするんですよ。それは何故かなぁと思ってたら、どうも字幕を読んで理解してるからなんですよ。要は、脚本を読んでるのと同じで、映像を観ながら本を読んでるという理解をしてた。だから「ああ、エンタテインメントをちゃんとやるべきやなぁ」と思って、『アンラッキーモンキー』のセリフを多くしたんです。字幕読んでもらって理解さそうとして。

■では、『MONDAY』は?

さらに初心に戻って創りましたね。今回4作目でまだ新人監督、初心者なんですけどね。90分くらいで、しかもエンタテインメントで、っていうのを全部押さえた、小粒でピリッとしたようなものを。

■小粒?

2時間あると、大作っぽくなってしまいますからね。90分というのは心地良い長さなんで。 オレの中では1作目の『弾丸ランナー』が、編集とかは雑ですけど、一番優れてると思ってるんで。やっぱりそれを目指そう、“打倒『弾丸ランナー』”という。一般 的には『ポストマン・ブルース』のほうが人気あるんですけどね。

■『ポストマン』が人気があるのは、ロマンチックだからですかね?

うん、そうですね。

■女性受けしてる、と

と、思うでしょ。違うんですね。男性受けしてるんですね(笑)。女性には、『アンラッキー・モンキー』が一番人気あるんですよ。それはきっと、女性が現実的だからなんでしょうね。 だから「ラブストーリーで女性をターゲットに」とかさんざん言われるんですけど、でもアンケートを取ると違うんですね。

■意外なのは、SABUさんがそこまでお客さんを意識しているということだったりもするんですけど。

『ポストマン』の編集をした人って、頭の中がアメリカンな人で、映画が始まって11分で何かが起こるとか、そういう映画の仕組みに則っていれば大丈夫やという考えかたなんですよ。 「じゃあ、『ポストマン』は?」って、みんなで観たら、11分目に小指が切れてるシーンがあって。どうだ、まいったかって(笑)。 でも、それは全部たまたまなんですよ。たぶん、オレは脚本書いてて、飽きそうなところで次の展開に行ってる。「これを説明したい」って、冗長になってる映画は多いんじゃないですかね。

■かったるくないほうがいい。

できれば、セリフもないほうがいいんですよ。映画は映像で語ってナンボですから。言葉はサポートだと思うし、できれば映像だけできっちり観せれたらいいなと思ってて。

■日本には、長回しが好きな監督さんとかいますよね?

あれはね、引き込まれれば問題ないんですよ。意味があればいい。ただ、「好きだから」って撮ってるのを観せつけられてもねぇ。フランス映画風とかねぇ。ああいうのを観るとムカつきますよ、やっぱり(笑)。

■SABUさんの映画はテンポいいですよね。『アンラッキー』も始まってすぐに、主人公が吉野公佳さん扮する美女を刺してる。5分、10分くらいでしたっけ?

いや、3分です(笑)。

■で、タイトルがバーンと出て、「ああ、なるほどな」って(笑)。とてもリズムがありますよね。

うん、それは考えてますよ。あのタイトルが出た以降はどんどん心情に迫る方向に流れていく。タルいといえば、タルい方向に流れていくから、「つかみオッケー」というところを目指しただけの話で。そのリズムですよね。

■それと、『弾丸』も『アンラッキー』も『ポストマン』も、なんとなく事件に巻き込まれる人が主人公ですね。あの突拍子の無い感じって何でしょうね?

結局はコメディというか、笑いの部分。巻き込まれて、パッと笑わすというのが好きなんで、たぶん。

■でも、“コメディ”というほど、笑う作品じゃないですよね。

コメディって、言われるとムカつくし、言われなかったら自分で言ってるし(笑)。よくわからないですね(笑)。

■でもその、コメディ的なる部分ってのは、つまり“おかしみ”みたいなところで。そういうのって日常的なところに端を発してたりしますよね。

考えてますね。かなりアホなことばかり想像してますね。

■そういうのって、どこから思いつくんですか?

『アンラッキー』の場合だと、なんか夜ボケーと歩いてて、曲がり角曲がったらグサッと刺されたら恐いなぁって、たまたま想像して歩いてたんですよ。 そしたら、その曲がり角を曲がったら、たまたまオバチャンがね、傘を畳みながらその先をオレのほうに向けて歩いてきたんですよ。そこでバッタリでく合わして。それが、いいなぁって(笑)。かなり前の話ですけどね。あれ、ビックリしたなぁ。

■(笑)。

あとね、トイレでね、ションベンしてたらね、流すのを押すボタンがあるでしょ。あのボタンがね取れてて、中の機械が剥き出しになってたんですよ。 で、それ見ながら、「ああ、これ爆弾とかやったら恐いなぁ」って思ってたら、そこに「ばくだん」って書いてあるんですよ。ションベン止まりましたね、あれは(笑)。 たまたま、想像とタイミング合うことがけっこうあって。

■四六時中そんなこと考えてるんですか?

そうですね。あんまり考えようとは意識してないですけどね。見てて変な人がいたら、いろいろ想像しちゃいますよね(笑)。

2号へつづく


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